WENというシャンプーをご存知だろうか
クレンジングコンディショナーなどと呼ばれる先駆け的シャンプーです。
簡単に言うと洗剤ではなく柔軟剤だけで洗濯をするようなもので、
言うまでもなく感触の良さだけを追求したシャンプーです。
リンス・イン・シャンプーではなく、リンス・de・シャンプーといった製品ですね。
洗う際の指通りの良さや時短というメリットを謳い、かなり販売数を伸ばしたようです。
しかし、しばらくするとアメリカ国内で実に2万件を超えるクレームがFDA(アメリカ食品医薬品局)に寄せられ、甚大な脱毛被害と、皮膚疾患を発生させてしまいました。
それもそのはずです。
柔軟剤 = 陽イオン界面活性剤 = WENでいうとベヘントリモニウムメトサルフェート
をベースにした 製品で頭を洗うという行為は、一種の脱毛剤を塗っているのと同じですから、そのようなことが起きるのは全く不思議ではありません。
例を挙げると、水飴に0.01重量%の4級カチオン界面活性剤を混ぜると、これは脱毛剤として機能します。
1重量%まで増やすとより効率よく脱毛させられます。
それ以上配合すると、脱毛効果の前に人体に副作用が大きくなるので推奨されません。
たった1%を超える配合で、です。
この副作用というのは、タンパク変性作用や殺菌作用といった陽イオン界面活性剤が持つ強い作用です。
陽イオン界面活性剤は、髪のダメージ部分に選択的に吸着し、親水状態となったダメージ部分を疎水化するという作用が起き、シリコンなどを主成分が吸着しやすい土台を作るという仕事をします。
髪に塗る分には役立つ、というか不可欠な成分であるのに対し、頭皮に塗ると脱毛剤として働く他、一般的な殺菌成分よりも遥かに強い殺菌効果を持ち、タンパク変性作用はラウリル硫酸ナトリウムを凌ぐ強度があります。
陽イオン界面活性剤だけで洗わせるようなシャンプーは最低ですが、陽イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤(通常の洗浄剤)のミックスも問題大アリです。
陽イオンと陰イオンで互いを不活化してしまう他、カチオン・アニオン錯体を形成してベッタリとした重い皮膜を全体に残してしまいます。
この重い被膜はシャンプーで簡単に落ちないので、使うほどに蓄積して重々しく、ツヤもなくなり、カラーも染まりにくく、扱いづらい状態となり、頭皮も正常な新陳代謝を阻害されてしまいます。
要するに、陽イオン界面活性剤はシャンプーとして頭皮に塗るような成分では全くないのです。
本当に残念なのは、こうしたWENのような事例が最近あったにも関わらず、似たような製品が次々に発売され出していることです。
非常に嘆かわしい事態です。
一般の方にはこの陽イオン界面活性剤で洗うと言う行為がどれほどリスキーかあまり知れ渡っていないと思いますが、
知っているはずのシャンプーを作る側が一体どういう気持ちでこの処方を組むのか、到底理解が追いつきません。
あえてこのようなリスキーな処方をせずとも、良い感触、良い仕上がりのシャンプーはいくらでも作り出せます。
陽イオン界面活性剤シャンプーを使うぐらいなら100円均一のシャンプーの方がよほど安全だと言っていいでしょう。
シャンプー選びを失敗しないための第一歩に、この陽イオン界面活性剤系シャンプーを避ける、という項目を加えねばなりません。
賢明な皆様には、絶対にこのような地雷シャンプーを選んでしまわないように、強めに進言したいと思います。
- 陽イオン界面活性剤で頭を洗うことなかれ
- 肌に付ける場合は脱毛剤として使われる主成分ですから。
- 陽イオンと陰イオンを混ぜるとさらにこびりつく蓄積皮膜が発生
- ハゲるか、重くべったり張り付くか、良いことなし
- 殺菌力も尋常じゃない。頭皮の善玉菌が全滅しちゃうよ。