総合点

総合ランク
成分数
植物エキスの数
コスパ
安全性
素材の品質
髪補修力
育毛力
使用感の良さ
エイジングケア
ホワイトニング効果
保湿効果
スキンケア力
環境配慮
浸透力
即効性
持続性
ツヤ感
サラサラ感
特に優れた素材
注意が必要な素材
香り
サブカテゴリ
メーカー
花王ブランド
MEMEME(ミーミーミー)容量
400ml参考価格
1540円1ml単価
3.9円JAN
4901301455116ASIN
B0FGVFBNRH発売日
2025-07-29ID
10938全成分
解析チームです。130年以上にわたり人々の「きれい」と向き合い、その毛髪科学研究の歴史は日本の美容史そのものと言っても過言ではない花王。近年では、髪の内部空洞に着目した「melt」、そして美髪5大必須成分という新たな概念を提唱した「THE ANSWER」と、科学的アプローチを前面に押し出した革新的なブランドを立て続けに市場へ投入し、我々専門家をも唸らせてきました。その巨人・花王が放つ第三の矢が、この「MEMEME(ミーミーミー)」。しかし、その佇まいは前二者とは明らかに一線を画します。Z世代の「気分」や「エモさ」といった感性に直接訴えかけるようなポップなビジュアルとコンセプト。これは、花王が築き上げてきたサイエンスの城から、エモーションの荒野へ打って出る新たなマーケティング戦略なのでしょうか。果たして、このカラフルなボトルの内側には、これまでの研究成果が凝縮された本物の実力が秘められているのか、それとも単なる見かけ倒しのティーン向け製品なのか?その真価を、我々のメスで徹底的に解剖していきましょう。
早速結論から申し上げましょう。当サイト「解析ドットコム」における本製品の総合評価は、5点満点中2.79点。2588製品中497位という順位は、一見すると平凡なスコアに映るかもしれません。しかし、その内訳を詳細に分析すると、この製品が持つ極めて特異なキャラクターが浮かび上がってきます。
上のレーダーチャートが示す通り、この製品の性能は極めて偏っています。特筆すべきは、「使用感(5.3点)」と「保湿力(4.5点)」という2つの項目。これは、数多ある市販トリートメントの中でもトップクラスの数値であり、業界平均を大きく逸脱しています。一方で、「スカルプケア力(2.0点)」と「エイジングケア力(1.9点)」は意図的に切り捨てられていることが明白です。また、「髪補修力(3.4点)」は平均を上回るレベルを確保しており、日常的なダメージケアには十分対応可能な設計と言えるでしょう。
要するに、この製品は「誰にでもそこそこ良い」万人受けする万能選手(アサルトライフル)ではありません。特定の悩み、すなわち「髪の乾燥は気になるが、トリートメントの重い使用感は絶対に嫌だ」という、一見矛盾したニーズを持つユーザーを確実に射抜くために、極限まで性能を特化させた「スペシャリスト(スナイパーライフル)」なのです。このユニークな設計思想こそが、本製品を理解する上での最大の鍵となります。次のセクションでは、この特異な性能を支えるキープレイヤーたちを、成分レベルで深く掘り下げていきましょう。
全42成分の中から、このトリートメントの「保湿特化・軽やか仕上げ」というキャラクターを決定づけている3つの重要成分を厳選し、その作用機序を深掘りします。これらを理解すれば、なぜあの驚異的な使用感が実現できたのか、その秘密が明らかになるはずです。
まず注目すべきは、花王が長年の研究の末に生み出した独自開発成分、ビスメトキシプロピルアミドイソドコサンです。通称「シャインセラミド」とも呼ばれるこの成分は、毛髪内部のタンパク質繊維の間に存在するCMC(細胞膜複合体)の、わずか数ナノメートルという極小の隙間にまで浸透する能力を持ちます。CMCは髪の水分保持やしなやかさを司る重要な組織ですが、カラーや熱などのダメージで流出しやすい性質があります。この成分は、その失われたCMCのラメラ構造(脂質と水分が交互に重なった層状構造)を補修し、髪を内部から立て直す働きが期待されます。花王の公式サイトでも、この技術が髪のしなやかさや柔らかさを回復させる根幹技術であることが示されています。
これは、単に髪の表面をシリコーンでコーティングして手触りを良く見せかける対症療法的なアプローチとは一線を画します。例えるなら、スカスカになった髪の内部のセメント部分に、超極小の補強材を流し込んで、構造そのものを内側から強くするような「根本治療」に近い役割を担っているのです。この内部からのアプローチが、表面的なコーティングだけでは得られない、弾むような「ぷるん」とした質感の基盤を築いています。
次に紹介するのは、通称「エルカラクトン」として知られるγ-ドコサラクトンです。この成分の最大の特徴は、ドライヤーやヘアアイロンの「熱」を味方につけるという、他に類を見ない作用機序にあります。通常、熱は髪を傷める最大の要因の一つですが、γ-ドコサラクトンは熱エネルギーを利用して毛髪ケラチンのアミノ基と化学的に結合(アミド結合)します。これにより、髪の表面に非常に持続性の高い疎水性の保護膜を形成するのです。
この「ヒートアクティブ効果」により、キューティクルのめくれ上がりが抑制され、「うねり」「絡まり」「まとまらない」といった悩みを改善する効果が確認されています。多くのコンディショニング成分が、すすぎやシャンプーで簡単に洗い流されてしまう一時的な効果に留まるのに対し、一度共有結合を形成したエルカラクトンの効果は、数回のシャンプーでも持続しやすいという大きな利点があります。まさに「敵であるはずの熱を、美髪の味方へと変える」逆転の発想から生まれた成分と言えるでしょう。
余談ですが、このような植物由来成分(γ-ドコサラクトンはナタネなどの植物油から誘導されます)が、熱エネルギーを化学反応のトリガーとして利用する「ヒートアクティブ技術」の主役となっているのは、サステナビリティと高機能性を両立させようとする近年の毛髪科学における非常に興味深いトレンドです。J-GLOBALに登録されている熱処理による毛髪への影響に関する研究などでも、この種の成分の有効性が議論されています。
そして、このトリートメントの驚異的な「使用感スコア5.3」を叩き出した最大の功労者が、このステアロキシプロピルジメチルアミンです。これはカチオン(陽イオン)界面活性剤の一種ですが、多くのトリートメントで主剤として使われるベヘントリモニウムクロリドのような「第4級」ではなく、より刺激がマイルドな「第3級アミン」に分類されます。この成分自体はカチオン性を持ちませんが、処方中で乳酸などの有機酸によって中和されることで初めてプラスの電荷を帯び、カチオンとして機能します。
濡れた髪やダメージを受けた髪はマイナスの電荷を帯びているため、プラスの電荷を持つこの成分が磁石のように髪に吸着します。これにより静電気の発生を抑え、キューティクルの乱れを整え、滑らかな指通りを実現します。重要なのは、第4級カチオンに比べて被膜感が少なく、非常に軽やかな仕上がりになる点です。従来のトリートメントにありがちな「重さ」や「ベタつき」を徹底的に排除し、「サラサラで軽いのに、なぜかまとまる」という、あの独特の使用感を生み出している核心がここにあります。分かりやすく言えば、「濡れてグチャグチャになった髪(マイナスの電気)に、プラスの電気を持ったこの成分が磁石みたいにくっついて、髪の毛一本一本を整列させてくれる。でも、すごく軽いタイプの磁石だから、髪が重くならない」というイメージです。この絶妙なバランス感覚こそ、花王の処方技術の真骨頂と言えるでしょう。
これまでの成分分析を踏まえ、この製品がユーザーにもたらす具体的な「価値」と、割り切るべき「限界」を、競合製品との比較も交えながら鋭く論じます。この光と影を理解することが、あなたにとってこの製品が「神トリートメント」になるか、「期待外れ」に終わるかの分かれ道です。
この製品の最大の価値は、間違いなく「保湿力は高いのに、仕上がりが驚くほど軽い」という、従来の常識を覆す質感にあります。これは、複数の技術が緻密に連携することで初めて実現される、まさに「処方の妙」です。
市場を見渡せば、高保湿を謳うトリートメントは数多く存在します。しかし、その多くはシリコーンや重い油剤を多用することで、しっとり感と引き換えに「ベタつき」や「重さ」を伴いがちでした。逆に、補修力に特化したサロン専売品は、髪にハリを与えすぎて質感が硬くなってしまうことも少なくありません。その中で、本製品が提示する「日常使いできる、高保湿・軽やか仕上げ」というポジションは、極めてユニークかつ価値が高いと言えます。これは単なる保湿トリートメントではありません。花王の処方技術が実現した「質感の革命」です。これまでトリートメントのベタつきや重さが苦手で、ヘアケアを諦めかけていた人にこそ、この未体験の仕上がりを試してみてほしいと、心から思います。
一方で、この製品の「光」が強ければ強いほど、その「影」もまた濃くなります。率直に言って、この製品はすべての人を救う救世主ではありません。まず、再度スコアを見てほしいのですが、「髪補修力3.4点」という数値は、あくまで「カラーやアイロンを日常的に使用するレベルの中程度のダメージ」を想定したものです。ブリーチを2回、3回と繰り返したようなハイダメージ毛、つまり髪内部のタンパク質が流出し、毛髪の骨格であるSS結合(ジスルフィド結合)が切断されてしまった髪を、根本から再構築するほどのパワーは、この処方では期待できません。
さらに致命的なのは、その守備範囲の狭さです。チャートが示す通り、この製品は「スカルプケア」と「エイジングケア」という概念を完全に捨てています。成分表を隅々まで確認しても、例えば育毛効果が期待されるミノキシジル誘導体やキャピキシル、あるいは頭皮の炎症を抑えたり血行を促進したりするような特化した植物エキスは見当たりません。同様に、加齢によって失われがちな髪のハリ・コシを直接的に向上させたり、ボリュームアップを狙ったりする成分も主役級では配合されていません。つまり、「頭皮環境を改善したい」「最近、髪が細く、弱々しくなってきた」といった悩みへのアプローチは、完全にスコープ外なのです。
プロの視点から言わせていただければ、この製品にスカルプケア効果や本格的なエイジングケア効果を求めるのは、美しいデザインのスポーツカーに、悪路を走破するためのオフロード性能を要求するようなものです。それは製品の欠点というより、設計思想のミスマッチに他なりません。この製品が「何をしないか」を明確に理解し、自分のニーズと合致するかどうかを冷静に見極めること。それこそが、購入後に後悔しないための、最も重要なリテラシーと言えるでしょう。
この製品をひと言で表すなら、『精密な狙撃を得意とする、軽装のスナイパー』。もっと言えば、『保湿特化型・質感クリエイター』です。
これまでの分析で明らかになったように、本製品は万人向けの汎用兵器(アサルトライフル)ではありません。特定のターゲット、すなわち「中程度のダメージ」「乾燥」「重い質感が苦手」という条件が揃ったユーザーを、極めて高い精度で仕留めるために設計された特殊な狙撃銃(スナイパーライフル)です。「保湿」と「使用感」という2つの性能においては、市場のあらゆる競合製品を凌駕するほどの圧倒的なパフォーマンスを発揮します。その一方で、「超ダメージ補修」や「エイジングケア」といった領域は完全に射程外。この明確なトレードオフを理解することが、この製品から得られる満足度を最大化する唯一の方法です。
もしあなたが、「カラーやアイロンによる日々のダメージで髪はパサつく。でも、トリートメントのあのベタっとした重い感じは大嫌い!」という、一見すると矛盾に満ちた、しかし非常に切実な悩みを抱えているのであれば、この『質感クリエイター』は、あなたのバスルームにおける最高の相棒となる可能性を秘めています。
もしあなたが、その矛盾した願いを本気で叶えたいなら、この『質感クリエイター』を試す価値は十分にあります。ぜひ一度、この「うるぷるなのに、羽のように軽い」という驚きの体験を、あなたの髪で確かめてみてください。
シャンプー解析ドットコム・カイセキストアなどを運営。