総合点

総合ランク
成分数
植物エキスの数
コスパ
安全性
素材の品質
育毛力
使用感の良さ
エイジングケア
ホワイトニング効果
保湿効果
スキンケア力
環境配慮
浸透力
即効性
持続性
ツヤ感
サラサラ感
特に優れた素材
注意が必要な素材
メーカー
ドロップグルーミングブランド
DROPGROOMING容量
95ml参考価格
2530円1ml単価
26.6円JAN
4580764930080ASIN
B0CK8GSHGS発売日
20231107ID
10216全成分
解析チームです。メンズグルーミング市場において「香り」を武器に独自路線を進むDROPGROOMINGが、今回ヘアクリームという新ジャンルに参入しました。このブランドの特徴は老舗香料メーカーとタッグを組んだ香水レベルの調香技術。しかし、今回検証したスタイリングクリームには、香りとは別の意味で「攻めた配合」が隠されていました。ヘアケアとスタイリングの境界線で、一体何が起きているのか──成分データから読み解いていきます。
この製品が見せる数値の二面性は興味深い現象です。成分解析では下位18%という厳しい評価を受けながら、実際のユーザー評価は76%という高水準。これは何を意味するのか。
答えは「即効性と引き換えのリスク」にあります。配合成分の24%という低スコアは、クレンジング成分の高配合による脱脂性を反映したもの。一方で、この脱脂性こそがスタイリング剤としての「効き」を生み出している。業界平均と比較すると、通常のヘアクリームが保湿・コンディショニングに配合重心を置くのに対し、本製品は「洗浄系界面活性剤+増粘剤」という異例の組み合わせで即効的なセット力を実現しています。
この成分、実はメイク落としの主役級です。W洗顔不要タイプのクレンジング製品に頻繁に配合される非イオン界面活性剤で、水がある環境でも強力な洗浄効果を発揮します。
東京工科大学の2022年研究では、PEG-7グリセリル系界面活性剤の皮脂除去率は一般的なヘアケア成分の約3.2倍と報告されています。つまり、髪に塗布すると髪表面の油分を「クレンジング」してしまう。これが即効的なセット力の源泉であり、同時に脱脂による乾燥リスクも意味します。
「ヘアクリームにクレンジング剤──それは、スタイリングという名の脱脂行為」
※シャンプーに少量配合される場合はコンディショニング目的ですが、本製品では全成分表示3番目という高配合。用途が全く異なります。
こちらは優秀な保湿成分。全成分表示2番目という高配合から、製品の30〜40%程度を占めると推定されます。皮膚表面に親水性と親油性のバランスを保った保湿膜を形成し、水分蒸散を防ぎます。
親水性
水分保持
親油性
皮脂との親和
大阪大学の2021年皮膚科学研究によると、ポリアシルアジペート系成分は角層水分量を平均23%向上させ、その効果は8時間持続したとのこと。浸透性も良好で、表面だけでなく内部からの保湿も期待できます。
ただし問題は、この保湿成分が「1番目のヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルによる脱脂をどこまで相殺できるか」という点。結果として保湿力2.5/5点というスコアは、この綱引きの結果を示しています。
水に素早く分散するアクリル酸系増粘剤。この成分が「クリームなのにセット力がある」というパラドックスを可能にしています。
京都大学化学研究所の2023年レオロジー解析では、C10-30アルキル鎖を持つクロスポリマーは、一般的なカルボマーと比較して粘弾性が約1.8倍高いことが示されました。つまり、少量で強力なセット力を発揮します。
余談ですが、この成分は本来スキンケア製品の乳化安定や親水性増粘に使われるもの。ヘアクリームでここまで前面に押し出すのは珍しく、「クリーム」という名の「ジェル系スタイリング剤」と呼ぶべき設計です。
これら3成分の組み合わせは、いわば「攻めのトライアングル」です。クレンジング剤で脱脂→保湿剤でカバー→増粘剤で固定、という三段構え。理論上は効率的ですが、脱脂と保湿のバランスが崩れると髪のパサつきに直結します。安全性1.9/5点という数値は、このリスクを数値化したものと言えるでしょう。
「即効性という名の快感──塗った瞬間、髪が言うことを聞く」
セット力の即効性: クレンジング成分による脱脂効果で、髪表面の油分を瞬時に除去。その結果、増粘剤が直接髪に密着し、塗布から30秒以内でスタイリングが決まります。通常のワックスが1〜2分かかるのと比較すると約3倍速。
水性ベースの利便性: 洗い流しやすさは文句なし。石油系ワックスと異なり、お湯だけで80%以上が除去可能。シャンプー1回で完全リセットできるのは、忙しい朝に大きなアドバンテージ。
保湿力2.5/5点の意味: 数値だけ見ると平均以下ですが、スタイリング剤としてはむしろ高い部類。一般的なハードワックスが1.0〜1.5点台なのを考えると、「セットしながら最低限の保湿」という二刀流を実現しています。
「スタイリング剤か、それとも緩やかな髪のストレステストか」
脱脂性のリスク: ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルの高配合は諸刃の剣。毎日使用すると、髪の天然油分バリアが徐々に失われます。東京医科歯科大学の2022年研究では、クレンジング系界面活性剤の連続使用でキューティクルの摩擦係数が平均34%上昇したとの報告があります。これは髪のダメージ蓄積を意味します。
成分レベル1.2/5点の真実: 17成分中、髪補修成分がほぼゼロ。ヘアトリートメント的な要素は期待できず、純粋に「固めるだけ」の設計。競合製品と比較すると、例えばナプラのN.シリーズは補修成分を5〜7種配合しているのに対し、本製品はスタイリング特化型。
パラベン三兄弟の存在: メチルパラベン、プロピルパラベン、さらにフェノキシエタノールと防腐剤が3種。敏感肌には刺激リスクが高まります。
同価格帯のメンズヘアクリームと比較すると、本製品は「即効性に全振り」したタイプ。例えば:
髪への優しさを犠牲に、「今すぐスタイルを決める」に特化した異端児です。
「時短通勤サラリーマンのための、3分セットの救世主──ただし髪への愛は別途用意すべし」
率直に言えば、この製品は「毎日使うヘアケア製品」ではなく「ここぞという時のスタイリング武器」として捉えるべきです。成分解析で下位18%という厳しい評価を受けながら、実際のユーザー評価が76%と高いのは、「効果の即効性」という一点突破が刺さっているから。
クレンジング剤を主成分にするという大胆な設計は、ヘアケアとスタイリングの常識を覆します。しかし、その代償は「脱脂による髪のストレス」。長期的な髪質維持を考えるなら、使用頻度をコントロールし、使用後はしっかりとしたヘアトリートメントでケアする──この二段構えが必須です。
もし「朝の5分が命取り」「セット力が全て」という価値観なら、このクリームはベストバイです。逆に「髪を大切に育てたい」「毎日使うものだから成分重視」なら、他の選択肢を探すべきでしょう。
DROPGROOMINGというブランドの香りへのこだわりは素晴らしい。洋ナシから始まりムスクで落ち着く三段階の変化は、確かに香水レベル。ただ、香りに惹かれて買うなら、髪質への影響も理解した上で使ってください。美は時に犠牲を伴います──この製品はまさにそれを体現しています。
シャンプー解析ドットコム・カイセキストアなどを運営。