解析ジャーナル

「茶のしずく」アレルギー誘発事件とは

「茶のしずく」アレルギー誘発事件

「茶のしずく」アレルギー誘発事件は、2005年から2010年にかけて起こった重要な事件で、多数の消費者が小麦アレルギーを発症したことが知られています。この事件は、株式会社悠香が販売していた「茶のしずく石鹼」に関連しています。

この石鹼には小麦由来の成分(小麦加水分解物「加水分解コムギ・グルパール19S」)が含まれており、これを肌を通して吸収することで小麦アレルギーを発症させることが報告されました。特に、この成分を肌に含めた状態で運動した際に全身性のアレルギー反応が発生した事例が多く報告されました。

この事件により、被害者弁護団が結成され、全国15か所の裁判所で集団訴訟を起こしました。訴訟の対象は、「茶のしずく石鹼」を販売していた株式会社悠香、同社が製造を委託していた株式会社フェニックス、加水分解コムギ「グルパール19S」を製造していた片山化学工業研究所の3社でした。損害賠償の要求の総額は70億4千万円にのぼりました。

裁判では、弁護側は「アレルギーの因子にはそもそもの遺伝子・体質もあり、すべての使用者が発症する訳ではない」と主張し、商品に欠陥はないと述べました。しかし、全国28か所の裁判所で起こされた集団訴訟は全ての件で和解が成立し、実際に支払われた和解金の総額は約12億円でした。

この事件を受けて、片山化学工業研究所はNPO法人生活習慣病予防研究センターの運営で「片山基金」を創設し、小麦アレルギーに関する研究を進めました。特に、喘息治療薬オマリズマブ(「ゾレア」)の投与で改善効果が得られることが解明され、その治療費は全額「片山基金」が負担しました。

現在では、「茶のしずく石鹼」は2010年12月8日以降出荷の商品には加水分解コムギなどの小麦由来成分は全く含まれていません。農薬不使用茶の二番茶茶葉のみを使用し、カテキンを豊富に配合しています。この事件は、集団訴訟の社会的な意義が明確になった良かった例と言えます。