解析結果
総合点
総合ランク
成分数
植物エキスの数
コスパ
安全性
素材の品質
使用感の良さ
エイジングケア
ホワイトニング効果
保湿効果
スキンケア力
環境配慮
浸透力
即効性
持続性
ツヤ感
サラサラ感
特に優れた素材
注意が必要な素材
香り
サブカテゴリ
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メーカー
オルビス(ORBIS)ブランド名
CLEARFUL(クリアフル)容量
180ml参考価格
1650円1mlあたり
9.2円JANコード
4908064081330ASIN
B09VX9DWXX発売日
20220317KaisekiID
10904全成分
解析チームです。化粧品科学の探求者として、我々は常に一つの問いを抱いています。それは、「その製品は、謳われている理想を、いかにして科学的根拠をもって実現しているのか?」というものです。今回我々の分析対象となったのは、オルビスの「クリアフル ローション」。オルビスといえば、1987年の創業以来「オイルカット」という革新的なコンセプトを掲げ、肌が本来持つ力を引き出すという一貫したフィロソフィーで市場をリードしてきたブランドです。ポーラ・オルビスグループの一員として、その研究開発力は業界でも高く評価されています。しかし、その哲学が、最もデリケートな悩みの一つである「アクネケア」という領域で、どのように具現化されているのでしょうか。
まず、このローションの立ち位置を客観的なデータで見ていきましょう。当解析ドットコムのデータベース(化粧水672製品中)では、総合ランク256位。これは上位約38%に位置する計算で、まさに実力派ひしめく中堅グループといったところです。総合点は5点満点中2.61点と、平均をわずかに上回るスコア。しかし、項目別に見るとこの製品の個性が浮かび上がってきます。
特筆すべきは、「全体的な安全性」が3.7点、「スキンケア性能」が3.1点と、平均以上の評価を得ている点です。これは、肌への配慮と、コンディションを整える機能性の両立を目指した設計思想の表れでしょう。一方で、エイジングケア力(3.0点)や保湿力(3.1点)も健闘しており、ニキビケアという枠に収まらないポテンシャルを秘めています。全27成分という構成は、多すぎず少なすぎず、各成分の役割を明確にした意図的な処方設計を感じさせます。ECサイトでの売上ランキングも非常に高く、多くのユーザーから継続的に支持されている事実が、その実力を物語っています。総じて、派手さはないものの、基本性能がしっかりしており、特に肌を健やかに保ちたいと考える層からの信頼が厚い、そんな製品像が見えてきます。
このローションの真価は、その巧みな成分の組み合わせにあります。ここでは特に重要な役割を担う4つのスタープレイヤーを深掘りしていきましょう。
いきなり呪文のような名前ですが、これがこの製品の「技術的コア」です。通称「ネオソリューアクリオ」とも呼ばれるこの成分は、水にも油にもなじむ両親媒性の浸透促進剤。化粧品の有効成分は、肌のバリア機能によって弾かれてしまうことが多いのですが、この成分が配合されることで、水溶性の有効成分(例えば有効成分のグリチルリチン酸ジカリウムなど)が角層のすみずみまで届きやすくなります。2010年の日本化粧品技術者会(SCCJ)の研究発表では、この成分がラメラ構造(角層の細胞間脂質の構造)を一時的に緩め、有効成分の通り道を作る作用機序が示唆されています。ただ配合するだけでなく「どう届けるか」にこだわる製剤技術の高さがここにあります。
油溶性ビタミンC誘導体のエース格。水溶性のビタミンC誘導体に比べ、肌の皮脂膜との親和性が高く、角層への浸透性に優れるのが最大の特徴です。さらに、肌内部の酵素によってゆっくりとビタミンCに変換されるため、その効果が長時間持続します。ある研究では、皮膚内で48時間以上も抗酸化活性を維持したとのデータもあり、肌を酸化ストレスから継続的に守る働きが期待できます。ニキビケア後の肌コンディションを整え、健やかな状態をキープするための重要なキーマンと言えるでしょう。
「プリンセスケア」という愛称でも知られる、美容業界注目の植物エキスです。このエキスの真骨頂は、紫外線ダメージによって発生する肌ダメージ酵素「トリプターゼ」の働きを阻害する点にあります。2008年に発表された研究では、ヒメフウロエキスがトリプターゼの活性を抑制することで、コラーゲンの分解を防ぎ、光老化から肌を保護する可能性が示されました。つまり、肌荒れを防ぐだけでなく、未来の肌トラブルの火種にもアプローチする先回りケアを担っているわけです。
感触改良とエモリエント効果を両立する、縁の下の力持ち。グリセリンは保湿剤として優秀ですが、特有のベタつきが難点。この成分は、そのベタつきを抑えながら、皮脂膜のように肌を保護し、水分の蒸発を防ぐ役割を果たします。さっぱりタイプでありながら、肌のつっぱり感を感じさせない絶妙な使用感は、この成分の貢献が大きいと言えます。
さて、このローションを総合的に評価すると、その最大のメリットは「浸透技術に裏打ちされた、攻めと守りのバランス設計」にあると言えます。有効成分であるグリチルリチン酸ジカリウムが肌荒れという「今ある火事」を鎮める役割(守り)を果たす一方、ビタミンC誘導体やヒメフウロエキスが酸化や光老化といった「未来の火種」にアプローチ(攻め)します。そして、それら全ての成分の効果を最大化するのが、浸透促進剤シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールです。これは、ただ成分を混ぜただけの製品とは一線を画す、極めてロジカルでクレバーな処方です。1,650円という価格でこの技術的こだわりを実装している点は、驚異的なコストパフォーマンスと言わざるを得ません。
競合のニキビケアローションの多くが、殺菌剤やピーリング成分で角質をケアするアプローチを取る中、オルビスは肌が本来持つバリア機能やコンディションを整えることに主眼を置いています。これは、刺激を感じやすい肌質の方にとって大きなアドバンテージとなるでしょう。
一方で、デメリットを挙げるとすれば、その「さっぱり感」ゆえの保湿力の限界です。全成分を見ると、保湿成分はBGや濃グリセリンが中心。これは脂性肌や混合肌には快適な使用感ですが、深刻な乾燥肌の方にとっては、これ一本で潤いを維持するのは難しいかもしれません。あくまで「ニキビケア」を主軸に置いているため、エイジングケアや本格的な保湿を最優先するなら、美容液やクリームでの補強が必須となります。これは欠点というよりは製品の特性ですが、万能ではないという点は率直に指摘しておきます。特定の悩みに深く刺さる反面、オールマイティな選手ではない、というのが我々の見解です。
オルビスの「クリアフル ローション」を分析して見えてきたのは、単なる薬用化粧水という枠には収まらない、オルビスの真摯な科学的アプローチでした。これは、「とりあえず有効成分入れときました」という安易な製品とは全く違います。「どうすれば、本当に必要な成分を、肌の必要な場所へ届けられるのか?」という問いに対して、製剤技術の力で一つの答えを示した作品です。
繰り返す肌トラブルに悩み、色々な製品を試しては落胆してきた人も多いでしょう。そんなあなたの肌は、もしかしたら成分の「量」ではなく、「届き方」に問題を抱えていたのかもしれません。このローションは、その根本原因に光を当ててくれる可能性があります。肌表面をなでるだけのケアから一歩踏み出し、角層レベルで肌のコンディションを整えたい。そんな本気の想いに、この一本はきっと応えてくれるはずです。価格以上の価値が、このボトルには詰まっています。
シャンプー解析ドットコム・カイセキストアなどを運営。