総合点

総合ランク
成分数
植物エキスの数
コスパ
安全性
素材の品質
洗浄剤の品質
洗浄力
髪補修力
育毛力
使用感の良さ
エイジングケア
ホワイトニング効果
保湿効果
スキンケア力
環境配慮
浸透力
即効性
持続性
ツヤ感
サラサラ感
特に優れた素材
注意が必要な素材
香り
サイズ (cm)
サブカテゴリ
メーカー
CLESCAREブランド
CLESCARE容量
500ml参考価格
2650円1ml単価
5.3円JAN
4573340596275ASIN
B0FPFQR6VY発売日
20250902ID
10999全成分
解析チームです。最近のメンズシャンプー市場、なんだかすごいことになっていませんか?まるで高級美容液かと見紛うような成分が次々と投入され、「髪を洗う」という行為そのものが、一種のスキンケア、いや「スカルプケア投資」へと変貌を遂げているようです。そんな中、ひときわ異彩を放つのが、今回取り上げるCLESCAREのメンズシャンプー。再生医療分野で注目を集める「ヒトサイタイ血由来成分」という、まさにトレンドのど真ん中を行く成分を引っ提げて登場しました。しかし、その華やかなアピールポイントの裏側で、私たちは成分表のある一点に釘付けになりました。それは、洗浄成分の構成です。果たして、最先端の美容成分と、ある意味で"クラシック"とも言える強力な洗浄成分の組み合わせは、本当に私たちの頭皮のためになっているのでしょうか?今回はその実態を、成分表の裏の裏まで、徹底的に深掘りしていきたいと思います。
さて、まずはこのシャンプーが一体どのような評価を受けているのか、客観的なデータから見ていきましょう。私たちが運営する「解析ドットコム」に登録されている3036製品の中で、このCLESCAREメンズシャンプーの総合ランクは1816位。総合評価は5点満点中2.32点という結果です。これは、率直に言って、市場の平均をやや下回るポジションと言わざるを得ません。
しかし、単に点数が低いと切り捨てるのは早計です。重要なのは、その「点数の内訳」です。下のグラフを見てください。このシャンプーの個性が一目でわかるはずです。
このレーダーチャートが示すのは、このシャンプーの極端なアンバランスさです。特に注目すべきは、「配合成分のレベル」が1.7点、「保湿力」が1.6点と、5点満点中2点を大きく割り込む厳しい評価であるのに対し、「洗浄力」は3.2点と突出して高い数値を示している点です。髪の補修力(1.8点)やスカルプケア性能(1.9点)も低迷しており、この数値の歪なバランスこそが、このシャンプーの性格を如実に物語っています。
要するに、このシャンプーは「頭皮や髪を健やかに育む」というよりも、「とにかく、力ずくで汚れを洗い落とす」という一点に特化しすぎている可能性が高いのです。メーカーは「エクソソーム」や「ヒト幹細胞」といった最先端の美容成分を大々的にアピールしていますが、成分評価や保湿力の低さは、それらの高価な成分が持つポテンシャルを十分に発揮できる処方設計になっていないことを示唆しています。これはまるで、「最高級のA5ランク和牛を、強火で焦げるまでウェルダンに焼き上げてしまう」ようなもの。素材の良さを、調理法が台無しにしてしまっている、そんなもどかしさを感じさせる構成なのです。
このシャンプーの処方箋は、まるで光と影、天使と悪魔が同居しているかのような、非常に興味深い(そして悩ましい)構成になっています。マーケティングの主役を張る華やかなスター成分と、その効果を根底から揺るがしかねないベース成分。この両者を詳しく見ていくことで、製品の真の姿が浮かび上がってきます。
まず、このシャンプーの「骨格」であり、洗浄力の根幹をなす主成分、ラウレス硫酸Na(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム塩)です。全成分表示の2番目に記載されていることからも、水に次いで最も多く配合されていることがわかります。この成分の特徴は、なんといっても「安価」で「非常に優れた泡立ち」と「強力な洗浄力」を持つこと。ワックスや皮脂をガッツリ落としたい、というニーズにはこれ以上なく応えてくれます。
しかし、その力強さには大きな代償が伴います。その洗浄力は、時として必要以上に皮脂を奪い去り、頭皮のバリア機能を低下させる原因となりうるのです。健康な頭皮には、外部の刺激から肌を守り、水分を保持するための適度な皮脂が必要です。ラウレス硫酸Naは、この「必要な潤い」まで根こそぎ洗い流してしまうリスクを抱えています。結果として、頭皮は乾燥し、それを補おうと逆に皮脂が過剰に分泌されたり、フケやかゆみを引き起こしたりする悪循環に陥る可能性があります。
簡単にいうと、毎日、食器用洗剤で頭を洗っているようなもの、と考えてみてください。お皿の油汚れはスッキリ落ちますが、毎日それで手を洗っていたら、手はガサガサになりますよね。それと同じことが、頭皮で起こりうるのです。
余談ですが、ラウレス硫酸Naは、一世代前の「ラウリル硫酸Na」の刺激性を少しでも緩和するために改良された成分です。分子が大きくなったことで皮膚への浸透性が若干低減されましたが、洗浄力の強さやタンパク質変性作用(髪の主成分であるケラチンを傷つける可能性)といった根本的な性質は、依然として強力なままです。美容や頭皮の健康を第一に考えるなら、毎日の使用は慎重に検討すべき成分と言えるでしょう。
次に、メーカーが最もアピールしたいであろう「スター選手」、ヒトサイタイ血由来幹細胞エクソソームとヒトサイタイ血幹細胞順化培養液です。これらは、近年の再生医療や美容皮膚科の分野で最もホットな成分の一つ。特に「エクソソーム」は、細胞から分泌される非常に小さなカプセルのようなもので、内部に様々な情報(マイクロRNAなど)を含んでいます。これが他の細胞に届くことで、細胞間のコミュニケーションを促し、組織の修復や活性化をサポートする働きが期待されています。
頭皮においては、毛母細胞やその周辺の細胞に働きかけることで、ヘアサイクルを整え、健やかな髪が育つための土壌をサポートするポテンシャルを秘めていると考えられています。まさに、エイジングケアの切り札とも言える存在です。
しかし、ここで冷静に考えなければならないのが、「これは洗い流すシャンプーである」という大前提です。これらの高価で繊細な成分が頭皮に浸透し、細胞レベルで作用するためには、ある程度の接触時間と、浸透を助ける処方技術が不可欠です。数十秒から長くても数分で泡とともに洗い流されてしまうシャンプーにおいて、その効果が一体どれほど発揮されるのか。正直なところ、その費用対効果には大きな疑問符が付きます。
例えば、2021年に『Journal of Dermatological Science』で発表された研究では、幹細胞培養上清液が毛乳頭細胞の増殖を促進することが示されていますが、これはあくまで実験室レベルで、一定時間作用させた結果です。(参照: Journal of Dermatological Science)。シャンプーという剤型は、これらの成分のポテンシャルを最大限に引き出すには、あまりにも不向きと言わざるを得ません。配合されていること自体は事実であり、マーケティング的な魅力は絶大ですが、その効果を過度に期待するのは現実的ではないかもしれません。
最後に、このシャンプーの処方における「良心」とも言える成分、ココアンホ酢酸Naに触れておきましょう。これは両性界面活性剤と呼ばれるグループに属し、非常にマイルドで皮膚への刺激が少ない洗浄成分です。ベビーシャンプーの主成分としても使われるほど、その安全性には定評があります。
この成分が配合されていることから、開発者側も主剤であるラウレス硫酸Naの刺激性を十分に認識しており、その「毒性」を少しでも中和しようという意図が透けて見えます。これは評価できる点です。ココアンホ酢酸Naは、ラウレス硫酸Naが作り出す泡をよりクリーミーにし、洗い上がりのきしみを多少緩和する役割も担っていると考えられます。
しかし、残念ながら、その役割はあくまで「補助」に過ぎません。全成分表示の順番を見ても、配合量はラウレス硫酸Naよりもかなり少ないことが推測されます。主成分であるラウレス硫酸Naの強力なインパクトを、補助剤だけで完全に打ち消すことは困難です。これは、燃え盛る焚き火に、コップ一杯の水をかけるようなもの。多少の鎮火効果はあっても、火の勢いを根本から止めるまでには至らないのです。
さて、主要な成分の役割を理解したところで、このシャンプーがもたらす「光」と「影」、つまりメリットとデメリットを総合的に分析していきましょう。どんな製品にも長所と短所はありますが、このシャンプーほどそのコントラストが激しいものも珍しいかもしれません。
メリットは、強力な洗浄力による一時的な爽快感と、トレンド成分配合による心理的満足感、そして価格の手頃さに集約されます。これらは短期的、あるいは特定のシーンにおいては魅力的に映るかもしれません。
一方でデメリットは、成分間の効果の相殺、過剰な脱脂による乾燥リスク、そして長期的な頭皮環境への悪影響という、より本質的で深刻な問題をはらんでいます。目先のサッパリ感と引き換えに、将来の頭皮の健康を損なう可能性を考慮する必要があるでしょう。
さて、長々と分析してきましたが、結論としてこのシャンプーをどう評価すべきか。最後に、私たちの率直な見解をまとめたいと思います。
このCLESCARE メンズシャンプーを、身近なもので一言で表現するならば、それは「高級ブランドのスーツを無理やり着せられた、筋肉隆々のボディビルダー」です。見た目(配合成分)は「エクソソーム」という最先端の生地で仕立てられ、非常に華やかで知的です。しかし、そのスーツの下にある本体(洗浄ベース)は、力任せでパワフル、繊細さや柔軟性には欠けています。結果として、スーツはパツパツで動きにくく、本来の優雅さや機能性を全く発揮できていない。そんなチグハグな印象を受ける製品です。
話題の成分をいち早く試してみたい、という知的好奇心を満たす上では、面白い製品かもしれません。しかし、髪と頭皮の健康を長期的な視点で真剣に考えるのであれば、残念ながら、もっと他に優れた選択肢が無数にあります。
特に、解析スコアにおける「配合成分のレベル:1.7点」という数値は、この製品の処方的なアンバランスさを何よりも雄弁に物語っています。シャンプーにおいて、洗浄剤は「骨格」です。この骨格がぐらついていては、どんなに素晴らしい美容成分(筋肉や装飾)を後から付け加えても、本質的な意味での健康的な身体(頭皮環境)を構築することは期待しにくいのです。マーケティングの華やかさに目を奪われがちですが、製品の根幹を見極めることが重要です。このシャンプーは、その典型的な事例と言えるでしょう。
では、全く使い道がないのかというと、そうとも言い切れません。使い方を限定すれば、その特徴が活きる場面もあります。
シャンプー選びは、つい「〇〇エキス配合!」や「最新の〇〇成分!」といった流行りのキーワードに飛びついてしまいがちです。しかし、本当に重要なのは、あなたの頭皮タイプと、シャンプーの「骨格」である洗浄成分との相性を見極めることです。もしあなたがこのシャンプーが気になっているのであれば、その華やかなアピールポイントだけでなく、今回解説した「ラウレス硫酸Na」という洗浄成分が、本当に自分の頭皮にとって必要なのか、一度立ち止まって考えてみることを強くお勧めします。あなたの5年後の髪は、今日のシャンプー選びにかかっているのですから。
シャンプー解析ドットコム・カイセキストアなどを運営。