解析チームです。富士フイルムといえばカメラや写真フィルムのイメージが強いかもしれませんが、実は「色あせない写真」を作るための抗酸化研究が90年以上蓄積されているんです。その技術をそのまま肌に応用したのがアスタリフトシリーズ。写真の退色を防ぐ化学が、肌の老化を防ぐ化学へ。この洗顔料は、その赤いパワーであるアスタキサンチンを武器にしながら、石鹸ベースで「しっかり落として、でもカサつかない」というバランスを目指した一本です。
概要
この洗顔料の立ち位置は、324商品中187位という「堅実なミドルレンジ」。ただし注目すべきは保湿力3.6点という数値です。洗顔料で保湿力が3点を超えるのは実はなかなか珍しく、これは全体の約30%程度。一方で洗浄剤の品質は3点、洗浄力は4点と、石鹸ベース特有の「しっかり洗える」特性も併せ持っています。
価格は100mlで2,750円とメンズ洗顔料としては標準的。コスパ指標は2.37点とやや控えめですが、富士フイルムの技術力を考えれば妥当なライン。スカルプケア力2.1点、髪補修力2.2点という数値から分かる通り、これは「頭皮ケア」ではなく完全に「フェイスケア特化型」の設計です。エイジングケア力2点という数値は、アスタキサンチン配合を考えるともう少し期待したいところですが、洗い流す製品という特性上、滞留時間が短いことが影響していると考えられます。
性能バランスチャート
余談ですが、富士フイルムの写真技術とスキンケアの接点は「コラーゲン研究」にもあります。写真フィルムの主成分はゼラチン(コラーゲンを加水分解したもの)で、同社は70年以上もコラーゲンを扱ってきた実績があるんです。その知見が化粧品開発にも活かされています。
注目の成分
ヘマトコッカスプルビアリス油(アスタキサンチン源)
アスタキサンチンの抗酸化力比較
この赤い色素の正体は、「一重項酸素」という最も毒性の強い活性酸素に対して圧倒的な消去能力を持つカロテノイド。ビタミンEの約550〜1000倍、β-カロテンの40倍、そして話題のCoQ10と比較すると約1000倍以上の一重項酸素消去能を持つことが富士フイルムの研究で実証されています。
サケが産卵期に激流を遡る際、大量の酸素を使うことで活性酸素が爆発的に発生します。その時、筋肉を守るために体内に蓄えているのがこのアスタキサンチン。つまり「生物が極限状態で自分を守るために選んだ成分」なんです。富士化学工業の2007年の研究データによれば、一重項酸素除去力はリコペンの1.6倍、β-カロテンの4.9倍、脂質過酸化抑制力はビタミンEの1000倍という数値が報告されています。
ただし、洗顔料という「洗い流す」製品特性上、この成分の接触時間は1〜2分程度。化粧水や美容液のように長時間肌に留まるわけではないため、抗酸化効果の実感値は限定的かもしれません。それでも、洗顔中の酸化ストレスを軽減し、洗い上がりの肌を保護する役割は期待できます。
ラウロイルグルタミン酸Na
アミノ酸系界面活性剤の中でも「しっとり系の代表格」と呼ばれる成分。グルタミン酸とラウリン酸を縮合させたアニオン界面活性剤で、弱酸性(pH5.5〜6.5程度)という肌に近い環境で洗浄活性を発揮します。
2014年の油化学会の報告によると、アミノ酸系界面活性剤は分子内に「アミド結合」を持つため、分子間で強い水素結合を形成。これによりタンパク質との親和性が高く、洗浄時に肌にしっとりした感触を与える特性があります。人工皮脂に対する洗浄試験では、ラウリル硫酸Naやラウレス硫酸Naといった一般的な界面活性剤と同等の洗浄力を示しながら、刺激性は大幅に低いというデータがあります。
ただし注意点として、グルタミン酸系は泡立ちと洗浄力が控えめで、「さっぱり感」はあまりありません。そのため、本製品では石鹸成分(ミリスチン酸+水酸化K、ステアリン酸)がベースにあり、ラウロイルグルタミン酸Naはサブ洗浄剤として優しさを補完する役割を担っていると考えられます。
水溶性コラーゲン
魚の骨や皮、うろこから抽出したコラーゲンの形をそのまま保持した水溶性タイプ。一般的なコラーゲンは分子量が大きすぎて肌に浸透しませんが、このタイプは分子構造を維持しながら水に溶解させているため、保湿膜として肌表面に留まりやすい特徴があります。
洗顔料に配合される場合、洗い流した後も微量が肌表面に残り、「保護膜」として機能。洗顔後の乾燥を防ぐバリア的な役割を果たします。富士フイルムがコラーゲン研究に強いのは前述の通りで、写真フィルムの製造で70年以上培った技術が活かされています。
グリチルリチン酸2K
甘草由来の抗炎症成分で、医薬部外品の有効成分としても認められている実績ある成分。ひげそりや日焼けによる肌荒れを鎮静化し、炎症性のダメージから肌を守る効果が期待できます。男性の肌は毎日のシェービングでバリア機能が低下しやすいため、この成分の配合は理にかなっています。
ヒオウギエキス
女性ホルモン様作用を持つイソフラボンを含む植物エキス。皮脂バランスを整え、過剰な皮脂分泌を抑制しながら、必要な潤いは保持するという調整機能が報告されています。男性の肌は女性よりも皮脂分泌が約2〜3倍多いとされるため、この成分が「テカリ防止」と「保湿」の両立をサポートします。
成分構成の本質
石鹸ベース(ミリスチン酸+ステアリン酸)で洗浄力を確保しつつ、アミノ酸系界面活性剤と保湿成分で「洗った後の乾燥」を抑制。アスタキサンチンは付加価値としてのブランディング要素が強く、実質的な効果は保湿成分群が担っている構造。
メリットとデメリット
◎ ここが光る
「写真技術が肌を守る」という説得力
90年以上の抗酸化研究。色あせない写真フィルムのために開発された技術が、老化しない肌のために使われる。これほど明快なストーリーを持つブランドは稀です。アスタキサンチンのβ-カロテン40倍、ビタミンE550倍という数値も、マーケティングトークではなく富士フイルムの解析技術センターによる実測値という点が信頼できます。
保湿力3.6点という洗顔料としての良バランス
洗顔料で保湿力3点超えは上位30%の実力。石鹸ベースなのにこの数値を維持できているのは、水溶性コラーゲン、グリセリン、ソルビトール、シア脂、ホホバ種子油といった保湿・エモリエント成分が総動員されているから。「しっかり洗えるのに、つっぱらない」という理想に最も近づいた処方の一つです。
価格設定の良心
2,750円/100mlという価格は、富士フイルムのブランド力とアスタキサンチン配合を考えれば控えめ。競合のメンズ洗顔料は3,000円〜5,000円のレンジが多い中、この価格帯は「毎日使える現実的なライン」。コスパ2.37点という数値も、成分構成を考えれば妥当です。
△ ここは要注意
石鹸ベースの宿命:脱脂力の強さ
ミリスチン酸+水酸化Kという組み合わせは、洗浄力4点という数値が示す通り「しっかり落とす」タイプ。乾燥肌や敏感肌の方には、朝の洗顔でこのパワーは過剰かもしれません。特に冬場は要注意。保湿成分でフォローしているとはいえ、基礎が石鹸である以上、脱脂力は避けられません。
配合成分レベル2.3点という現実
成分数22個という構成は決して多くなく、アスタキサンチンを除けば「定番成分の組み合わせ」という印象。革新的な美容成分や最新のペプチド類は見当たらず、エイジングケア力2点という評価もこれを反映しています。洗い流す製品なので仕方ない面もありますが、「アスタリフト」というプレミアムブランドを冠する割には、成分構成はベーシック寄りです。
スカルプケア力2.1点の意味
頭皮ケア成分がほぼ不在で、完全にフェイスケア特化。男性の場合、洗顔料で顔から髪の生え際まで洗う人も多いですが、この製品でそれをすると頭皮の保湿不足になる可能性があります。「顔専用」と割り切る必要があります。
現実的な評価
アスタキサンチンの赤いパワーは魅力的だが、洗顔料である以上、その効果は限定的。むしろ本質は「石鹸+保湿成分」というクラシックな処方を、富士フイルムの技術力でブラッシュアップしたもの。過度な期待は禁物だが、「しっかり洗って、でもカサつかない」というバランス重視派には信頼できる選択肢。
まとめ
「色あせない写真」を作る技術が、「老いない肌」を目指す洗顔料に。
アスタリフト メン モイストクリアウォッシュを一言で表すなら、「写真屋が本気で作った、赤い盾を纏う洗顔料」。富士フイルムの90年以上にわたる抗酸化研究が結晶化し、ビタミンEの550倍という圧倒的な一重項酸素消去能を持つアスタキサンチンを配合。ただしこれは洗い流す製品なので、その真価は「ブランドストーリーの説得力」と「保湿とのバランス」にあります。
正直に言えば、配合成分レベル2.3点、エイジングケア力2点という数値は「革新的」とは言えません。石鹸ベースで洗浄力4点という特性は、乾燥肌には強すぎる可能性もあります。しかし保湿力3.6点という洗顔料としては優秀な数値、そして2,750円という良心的な価格設定を考えれば、「しっかり洗いたいけど、カサつくのは嫌」というニーズに応える堅実な選択肢です。
総合ランク187/324位という位置づけは、決して「トップランナー」ではありませんが、「信頼できるミドルクラス」。口コミ評価4.2点、直近30日間のEC売上ランキング4876位という数字が示す通り、派手さはないが「使った人が納得する実用性」を備えています。
富士フイルムというブランドの信頼性、アスタキサンチンという明確な差別化要素、そして石鹸+保湿という王道処方。この3つが交差する地点に、この製品の価値があります。革命的な何かを期待するのではなく、「毎日使える、ちゃんとした洗顔料」を求める人にこそフィットする。それがこの製品の本質です。
使用シーン別推奨度
-
朝の洗顔(普通肌〜脂性肌)
◎
石鹸の洗浄力が朝のリセットに最適。保湿成分がカバーするので過度な乾燥も防げる。
-
夜の洗顔(メイクなし)
◎
皮脂や汚れをしっかり落としつつ、アスタキサンチンが酸化ストレスをケア。
-
乾燥肌の方
△
保湿力3.6点は優秀だが、石鹸ベースの脱脂力が気になる可能性。冬場は特に注意。
-
敏感肌の方
△
アミノ酸系界面活性剤配合で刺激は抑えられているが、石鹸のアルカリ性が合わない場合も。
-
コスパ重視の方
○
2,750円/100mlは、富士フイルムブランドとアスタキサンチン配合を考えれば妥当なライン。
-
エイジングケア重視の方
△
エイジングケア力2点。洗い流す製品の限界があり、化粧水や美容液での補完が必須。




アスタリフト アドバンスドローション
アスタリフト メン (ASTALIFT MEN) ジェリー アクアリスタ
アスタリフト メン (ASTALIFT MEN) モイストローション
アスタリフト メン (ASTALIFT MEN) モイストエマルジョン