総合点

総合ランク
成分数
植物エキスの数
コスパ
安全性
素材の品質
洗浄剤の品質
洗浄力
髪補修力
育毛力
使用感の良さ
エイジングケア
ホワイトニング効果
保湿効果
スキンケア力
環境配慮
浸透力
即効性
持続性
ツヤ感
サラサラ感
特に優れた素材
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香り
サブカテゴリ
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メーカー
nijitoブランド
HARU(ハル)容量
300ml参考価格
5911円1ml単価
19.7円ASIN
B0FHYNPJ2N発売日
20250717ID
10997全成分
解析チームです。シリーズ累計販売本数700万本*という驚異的な数字を叩き出した「kurokamiスカルプ」で、ナチュラルヘアケア市場に確固たる地位を築いたharu。そのブランドが次に挑むのは、「フケ・かゆみ・乾燥」といった、より繊細で複雑な「ゆらぎがちな頭皮」という課題です。2025年7月に発売された新製品『スカルプクリアバランス』は、ブランドが培ってきた「100%天然由来」という哲学を継承しつつ、よりスカルプケアに特化した処方で市場に投入されました。既存のharuが持つ「優しさ」のイメージはそのままに、果たして洗浄力や頭皮へのアプローチはどのように進化したのか?従来のファンはもちろん、新たな悩みを抱えるユーザー層の期待に応える実力を秘めているのか。今回はその核心に、成分レベルで深く、そして率直に切り込んでいきたいと思います。
* 2023年10月末時点のシリーズ累計販売本数
まず、このシャンプーが市場全体でどの位置にいるのか、客観的な数値から見ていきましょう。全3036商品中493位という順位は、上位約16%に食い込む実力派であることを示しています。決して凡庸な製品ではなく、確かな個性と性能を持っていることが伺えます。
特に注目すべきは、その評価のアンバランスさです。安全性スコアは5点満点中4.8点と、ほぼ満点に近い驚異的な数値を記録。これは、刺激の可能性がある成分を徹底的に排除し、肌への優しさを最優先するharuブランドの哲学が色濃く反映された結果と言えるでしょう。また、洗浄剤の品質も4.4点と非常に高く、洗浄成分の組み合わせには相当なこだわりが感じられます。
一方で、いくつかの項目は平均的な評価に留まります。例えば、洗浄力は3.7点。これは一般的なアミノ酸系シャンプーとしては高めの数値であり、製品の「すっきり感」を特徴づける要素ですが、強力な洗浄力を求めるユーザーには物足りないかもしれません。また、育毛効果は1.8点と低く、この製品が発毛・育毛を主目的としていないことを明確に示しています。そして、最も評価の足を引っ張っているのがコストパフォーマンスで、3.2点。300mlで5,911円(100mlあたり約1,970円)という価格設定は、その性能を考慮しても、多くのユーザーにとって大きなハードルとなるでしょう。
要するに、このシャンプーは「肌への優しさを最大限に確保しつつ、従来のアミノ酸系シャンプーにありがちな洗浄力の物足りなさを解消しようとした意欲作」と言えます。ただし、そのこだわり抜いた処方設計が、そのまま価格に直結してしまっている、というのが現時点での客観的な評価ですね。
さて、ここからは成分のディープな世界です。このシャンプーの個性を決定づけているキーマンたちを、学術的な視点も交えて解剖していきましょう。なぜこの組み合わせなのか、その意図を探ります。
このシャンプーの処方を理解する上で、避けては通れないのが主洗浄成分であるココイルグリシンKです。一般的に「アミノ酸系洗浄剤」と聞くと、多くの人が「マイルド」「低刺激」といったイメージを抱くでしょう。しかし、この成分はその常識を覆す"異端児"的な存在です。
最大の特徴は、石鹸に近い弱アルカリ性の環境で最も高い洗浄力を発揮する点にあります。一般的なアミノ酸系洗浄剤が弱酸性で機能するのとは対照的です。これにより、アミノ酸系ならではの肌への優しさを持ちながら、皮脂や汚れをしっかりと落とす「さっぱり感」を実現しています。「優しいアミノ酸系のイメージで使うと、その洗浄力に驚くかも」しれません。
この成分の二面性は、研究データにも表れています。例えば、IFSCC(国際化粧品技術者会連盟)で2021年に発表された研究では、ココイルグリシンKが同等濃度の石鹸に比べて皮膚刺激性を40%低減したというデータが示されており、その低刺激性が裏付けられています。しかしその一方で、ファンケル社の研究では、ココイルグリシンKで洗浄した後の肌は、洗浄前に比べて水分量が大きく低下するという結果も報告されています。
つまり、ココイルグリシンKは「低刺激性と高い洗浄力を両立させる」ためのキー成分でありながら、乾燥肌やダメージヘアにとっては「必要な潤いまで奪いかねない諸刃の剣」でもあるのです。このシャンプーが「ゆらぎがちな頭皮」にどう作用するかは、この成分の働きを他の成分でいかにコントロールしているかにかかっています。
ここで登場するのが、もう一つの重要なアミノ酸系洗浄剤、ココイルメチルアラニンNaです。先ほどのココイルグリシンKが"異端児"なら、こちらはまさに"優等生"。弱酸性〜中性域で機能し、適度な洗浄力を持ちながら、洗い上がりはしっとりとまとまる、非常にバランスの取れた成分です。
処方におけるこの成分の役割は明確です。それは、ココイルグリシンKが持つ強い洗浄力とアルカリ性を「中和」し、全体のバランスを整えることです。いわば、パワフルなエースピッチャー(ココイルグリシンK)を支える、冷静沈着なキャッチャーのような存在。この「名脇役」のおかげで、シャンプー全体として「さっぱりするけど、つっぱらない」という絶妙な使用感に着地させているのです。この組み合わせは、洗浄剤の品質スコアが高い理由の一つと言えるでしょう。
洗浄成分の次に注目したいのが、補修成分です。髪の約80%はケラチンというタンパク質でできています。カラーやパーマ、紫外線などでダメージを受けると、このタンパク質が流出し、パサつきや切れ毛の原因となります。そこで重要になるのが、失われたタンパク質を補給すること。このシャンプーでは、その役割を加水分解ダイズタンパクが担っています。
「加水分解」とは、タンパク質を酵素などで細かく分解し、分子量を小さくする処理のこと。これにより、髪の内部にまで成分が浸透しやすくなります。単に髪の表面をコーティングするだけでなく、内部からダメージを補修し、ハリやコシを与える効果が期待できるわけです。まさに、髪にとっての"プロテイン"補給と言えます。
ここで少し専門的な話をすると、近年の研究では、こうしたタンパク質加水分解物の可能性がさらに注目されています。2024年にNCBI(アメリカ国立生物工学情報センター)に掲載された論文(PMC12189443)では、「タンパク質加水分解物は、分子量が小さいことで生物学的利用能(体内で効果を発揮する割合)が向上し、免疫機能への応用も期待される」と述べられています。これは化粧品においても同様で、単なる保湿・補修成分としてだけでなく、頭皮の健やかな環境をサポートする、より積極的な役割を担う可能性を示唆しています。
このシャンプーが「スカルプクリアバランス」と名乗る所以が、このハーブコンビにあります。メーカーが謳う「フケ・かゆみを抑制する」という効果の科学的根拠は、まさにこの二つの精油の働きに集約されています。
まずユーカリ葉油。そのスーッとする清涼感のある香りはよく知られていますが、頭皮への効果も多岐にわたります。特に重要なのが、セラミド合成促進作用です。セラミドは、肌のバリア機能を維持するための重要な脂質。乾燥や刺激で頭皮のセラミドが減少すると、バリア機能が低下し、かゆみやフケといったトラブルを引き起こしやすくなります。ユーカリ葉油は、このセラミドの生成をサポートすることで、頭皮自らが潤いを保ち、外部刺激から身を守る力を高める助けとなります。
そして、相棒のティーツリー葉油。こちらは、その強力な抗菌・抗炎症作用で知られています。フケやかゆみの一因とされるマセラチア菌などの常在菌の異常繁殖を抑え、頭皮をクリーンな状態に保ちます。2020年のMedical Herb誌に掲載された情報によると、ティーツリーオイルはその抗菌・抗炎症作用により、様々な皮膚トラブルに有効であることが示唆されています。
余談ですが、ティーツリーオイルの優れた抗菌効果は古くから知られており、第二次世界大戦中にはオーストラリア兵の救急キットに常備されていたほどです。そんな歴史を持つ成分が、現代の頭皮ケアに応用されているのは興味深いですね。この二つのハーブが組み合わさることで、頭皮のバリア機能を内側から高め(ユーカリ)、外的な菌の繁殖を抑える(ティーツリー)という、攻守両面からのアプローチが完成します。まさに頭皮の"お守り"コンビです。
最後に、少しマニアックですが見逃せない"仕事人"を紹介します。ラウリン酸ポリグリセリル-10は、成分表示の中盤に記載されており、一見すると地味な存在です。主な役割は、水と油のように本来混じり合わない成分を均一に混ぜ合わせる「乳化剤」です。シャンプーのテクスチャーを安定させ、使い心地を良くするために配合されています。
しかし、この成分の真価はそれだけではありません。近年の研究で、特定のポリグリセリン脂肪酸エステル(この成分の仲間)には、ニキビの原因となるアクネ菌などに対する抗菌作用があることが分かってきました。つまり、この成分は乳化剤として働きながら、同時に頭皮の常在菌バランスを整え、トラブルを防ぐという「隠れた貢献」をしている可能性があるのです。主役の洗浄剤やハーブオイルだけでなく、こうした脇役の多機能性にも目を向けることで、処方全体の完成度の高さが見えてきます。
さて、成分の役割を理解した上で、このシャンプーがもたらす具体的なメリットと、目を背けてはいけないデメリットを本音で語っていきましょう。
このシャンプー最大の長所は、「しっかり洗えるのに、頭皮への優しさを忘れない」という絶妙なバランス感覚です。これは、まさに"いいとこ取り"の処方設計の賜物と言えます。
攻めの洗浄成分である「ココイルグリシンK」が、アミノ酸系とは思えないほどの洗浄力で頭皮の余分な皮脂や汚れをすっきりと洗い流します。これにより、従来のナチュラル系シャンプーにありがちだった「洗った気がしない」「夕方になるとベタつく」といった不満を解消しています。一方で、守りのマイルド洗浄成分「ココイルメチルアラニンNa」や両性界面活性剤の「ラウラミドプロピルベタイン」が、ココイルグリシンKの強い洗浄力を巧みにコントロールし、洗いすぎによる乾燥や刺激を防ぎます。この巧みな連携プレーが、洗浄力スコア3.7点、安全性スコア4.8点という、一見矛盾するような評価を両立させているのです。
さらに、その洗浄ベースを支えるのが、多角的な頭皮ケア成分の配合です。抗炎症作用で知られるグリチルリチン酸2K、そして先述したユーカリ葉油、ティーツリー葉油、さらに抗酸化作用を持つセージ葉エキスやローズマリー葉エキスなどが、フケ、かゆみ、赤みといった頭皮トラブルに対して、様々な角度からアプローチします。これは、一つの有効成分に頼るのではなく、複数の成分の相乗効果で頭皮全体のバランスを整えようという、非常に考えられた処方設計です。
ここで、スカルプケアシャンプーの代表格である「スカルプD」と比較してみると、そのアプローチの違いがより鮮明になります。
| haru スカルプクリアバランス | スカルプD 薬用スカルプシャンプー オイリー | |
|---|---|---|
| アプローチ | 東洋医学的アプローチ 植物由来成分(ハーブ等)の相乗効果で、頭皮本来のバランスを整え、健やかな環境へ導く。 |
西洋医学的アプローチ 医薬部外品有効成分(ピロクトンオラミン等)で、フケ・かゆみの原因菌に直接的にアプローチし、殺菌・抑制する。 |
| 主要な成分 |
|
|
| コンセプト | 頭皮環境の"調和"と"バランス" | 頭皮トラブルへの"直接対決"と"予防" |
このように、スカルプDが特定の症状に対して医薬品的な有効成分で直接的に叩く「西洋医学」的な発想だとすれば、haruは植物の力で頭皮全体のコンディションを底上げし、トラブルが起きにくい環境を作る「東洋医学」的な発想に近いと言えるかもしれません。どちらが優れているというわけではなく、アプローチが根本的に異なるのです。
手放しで賞賛できないのが、このシャンプーが抱える二つの大きな課題です。第一に、あまりにも強気な価格設定です。100mlあたり約1,970円という価格は、もはや一般的な市販品のカテゴリーを完全に逸脱し、高級サロン専売品やデパートコスメの領域に踏み込んでいます。確かに、配合されている成分の品質や処方のこだわりは素晴らしいものがあります。しかし、同価格帯には、より先鋭的な毛髪科学に基づいた成分を配合した製品や、ブランド価値の高い製品がひしめいています。この価格を正当化できるだけの、圧倒的な独自性や効果が実感できるか、という点には正直、疑問符がつきます。
そして第二の、より本質的なデメリットが、「アミノ酸系=誰にでも優しい」という一般的なイメージとのギャップです。この製品のさっぱり感の源であるココイルグリシンKは、弱アルカリ性です。健康な髪は弱酸性(pH4.5〜5.5)に保たれており、この状態が最もキューティクルが引き締まり、安定しています。アルカリ性に傾くと、キューティクルは貝殻のように少し開いてしまいます。
健康な髪であれば、すすぎやトリートメントで弱酸性に戻るため大きな問題にはなりませんが、問題はカラーやパーマを繰り返したハイダメージ毛です。ダメージ毛はもともとキューティクルが傷つき、開きやすい状態にあります。そこにアルカリ性のシャンプーを使用すると、キューティクルの開きを助長し、きしみや、さらなるダメージ、そしてカラーの色落ちを加速させるリスクがあるのです。実際に、JSDA(日本石鹸洗剤工業会)関連の研究報告では、ココイルグリシンKのようなアルカリ性洗浄剤がダメージ毛のキューティクル剥離リスクを高める可能性が示唆されています。
「アミノ酸系だから安心」と安易に考えてダメージ毛の方が使用すると、「思ったよりきしむ」「髪がパサつく」といった、期待とは逆の結果を招く可能性があることは、率直に指摘しておくべきでしょう。
さて、長々と語ってきましたが、結論をまとめましょう。このharu スカルプクリアバランスを、身近なもので一言で表現するならば、「意識高い系のオーガニックサラダボウル。栄養満点でヘルシーだけど、お値段は高級ステーキ並み」といったところでしょうか。
処方設計の完成度は非常に高く、特に「頭皮はベタつくのに、髪は乾燥する」「洗浄力が強いシャンプーは刺激が気になる」といった、いわゆる"混合頭皮"タイプの方には、非常に面白い選択肢になるでしょう。複数のハーブが織りなす複雑でナチュラルな香りが好きな人にも、間違いなく刺さるはずです。洗浄力と低刺激性という、トレードオフの関係にある二つの要素を、ここまで高いレベルで両立させた手腕は見事です。
しかし、その対価として支払う価格は決して安くありません。この価格を出すのであれば、最先端の毛髪補修成分を配合した製品や、より強力な育毛有効成分を配合した医薬部外品など、他にも魅力的な選択肢が多数存在します。特に、カラーやパーマを繰り返しているハイダメージ毛の方や、コストパフォーマンスを最優先する方には、積極的には推奨しにくい、というのが正直な評価です。このシャンプーが持つ価値は、その人の悩みや価値観によって大きく変わるでしょう。
もしあなたがこのシャンプーに興味を持ったなら、まずは「自分の頭皮に、この"投資"をする価値があるか」を、お財布とじっくり相談してみてほしいと思います。もし試すのであれば、いきなりフルボトルを購入するのではなく、公式サイトなどで少量サイズやお得なキャンペーンが実施されていないか、まずは情報をチェックするのが賢い選択と言えるでしょう。
シャンプー解析ドットコム・カイセキストアなどを運営。