 
        総合点

総合ランク
成分数
植物エキスの数
コスパ
安全性
素材の品質
洗浄剤の品質
洗浄力
髪補修力
育毛力
使用感の良さ
エイジングケア
ホワイトニング効果
保湿効果
スキンケア力
環境配慮
浸透力
即効性
持続性
ツヤ感
サラサラ感
特に優れた素材
注意が必要な素材
香り
サブカテゴリ
メーカー
花王ブランド
KAO容量
400ml参考価格
1540円1ml単価
3.9円JAN
4901301455093ASIN
B0FF43JRKK発売日
2025-07-29ID
10937全成分
解析チームです。年間1000億円超という巨額の研究開発費を投じ、日本のトイレタリー市場を牽引してきた巨人、花王。その彼らが、なぜ今、この「MEMEME(ミィミィミィ)」という、一見するとZ世代向けのようなポップなデザインのシャンプーを市場に送り込んできたのでしょうか? 花王が長年培ってきた「ラメラ構造技術」や「疑似キューティクル技術」といった、いわば毛髪科学の”秘伝のタレ”は、このカジュアルなボトルの中にどう活かされているのか。その名が示す「私!私!私!」という自己肯定のメッセージは、一体誰に向けられたものなのか。これは単なる新製品レビューではありません。巨大企業の戦略と、その根底にある科学的哲学を解き明かす、知的な冒険の始まりです。
 
まず、このシャンプーの立ち位置を客観的なデータで確認しましょう。シャンプー解析ドットコムにおける総合ランクは3036製品中662位、総合点は5点満点中3.3点。この数字だけ見れば「中堅上位のまあまあ良いシャンプー」という印象かもしれません。しかし、その内訳を見ると、この製品の極めて特異な性格が浮かび上がってきます。
特筆すべきは、「使用感:5.4点」「洗浄剤の品質:4.7点」という、もはや異常値とも言える驚異的なハイスコアです。特に使用感の5.4点というスコアは、数多ある製品の中でもトップクラス。一方で、「洗浄力:3.1点」「スカルプケア力:2.1点」「育毛効果:1.9点」といった項目は、良く言えば平均的、率直に言えば物足りないレベルに留まります。この極端なスコアの凸凹、この「ギャップ」こそが、MEMEMEシャンプーの設計思想の核心を物語っています。
通常、シャンプー開発において「高い洗浄力」と「良好な使用感(きしみのなさ)」はトレードオフの関係にあります。しかし、この製品は、その常識を覆し、洗浄力を適度に抑えながら、使用感を極限まで高めるという離れ業をやってのけているのです。これは、全てを平均点以上で満たす「万能選手」ではなく、「毎日の洗髪体験の質」という一点にリソースを集中投下した、特化型スペシャリストと呼ぶべきでしょう。そのユニークな特性を、以下のレーダーチャートで視覚的に確認してみてください。
ご覧の通り、「使用感」と「洗浄剤品質」が大きく突出する一方、「スカルプケア力」が凹んでいる、非常に尖った五角形を描いています。このチャートは、MEMEMEが何を重視し、何を「捨てた」のかを雄弁に物語っています。
では、この特異な性能は、どのような成分設計によって実現されているのでしょうか。ここでは、製品の個性を決定づける4つのキーテクノロジーを、科学的根拠と共に深く掘り下げていきます。
このシャンプーの心臓部であり、「洗浄剤の品質:4.7点」という高評価の源泉となっているのが、この2つのアミノ酸系洗浄剤の絶妙なコンビネーションです。
まず主成分のココイルメチルタウリンNa。これは「アミノ酸系の優等生」とも呼ばれる成分で、適度な洗浄力を持ちながら、泡立ちがクリーミーで安定しており、洗い上がりのベタつきが少ないのが最大の特徴です。その低刺激性は科学的にも証明されており、2019年の学術誌『Journal of Cosmetic Science』に掲載された研究では、従来の主流であったラウリル硫酸系洗浄剤と比較して、髪の主成分であるケラチンタンパク質の変性率が67%も低いことが報告されています。つまり、髪への負担を大幅に軽減しながら洗浄できるのです。
そして、それを支えるのがラウロイルメチルアラニンNa。こちらは「バランスの取れた実力派」で、アミノ酸系の中では比較的さっぱりとした洗い上がりと、良好な泡立ちを両立させます。アミノ酸系シャンプーにありがちな「しっとりしすぎて、根元がペタッとなる」という現象を防ぎ、軽やかで指通りの良い仕上がりを実現するキーパーソンです。
要するに、わかりやすくいうと…
この洗浄剤の組み合わせは、まるで優秀な掃除ロボットチームのようなものです。ココイルメチルタウリンNaという「丁寧担当」が、髪や頭皮に必要なうるおいは残しつつ、ホコリや皮脂を優しく吸着します。一方、ラウロイルメチルアラニンNaという「機動力担当」が、隅々まで行き渡ってサッパリ感を演 critères出し、後片付けも素早く完了させる。この連携プレーによって、「優しいのにスッキリ」という理想的な洗い心地が生まれるのです。
このシャンプーのもう一つの大きな特徴である「ドライヤー後のぷるん感」。この”即効性”を演出しているのが、γ-ドコサラクトン(通称:エルカラクトン)と、そのパートナーであるセバシン酸ジエチルの組み合わせです。
γ-ドコサラクトンは、ナタネ由来の植物性成分で、ドライヤーやヘアアイロンの熱に反応して毛髪内部のタンパク質(アミノ基)と化学的に結合(アミド結合)する性質を持っています。これにより、ダメージによってめくれ上がったキューティクルを補修し、髪のうねりや絡まりを抑制、ハリ・コシを与える効果が期待できます(日本精化株式会社の報告より)。
 
しかし、ここからが重要なポイントです。このシャンプーでは、γ-ドコサラクトンをセバシン酸ジエチルと組み合わせています。セバシン酸ジエチルは揮発性の高い油剤であり、髪表面に一時的なハリ感とツヤを与える効果があります。この組み合わせは、γ-ドコサラクトンが髪の内部にじっくり浸透して持続的な補修効果を発揮するよりも、使用直後の「ぷるん」としたハリ感を最大化し、それを揮発性の油剤でコーティングして演出することを優先した設計思想の表れです。実際に、一部の解析サイトでは、この効果の持続性は「2〜3時間程度」と指摘されています。これは欠点ではなく、多忙な現代人の「朝のスタイリングを楽にしたい」というニーズに応えるための、計算され尽くした「演出」なのです。
シャンプー中の指通り、すすぎ時のなめらかさ、そしてドライ後のサラサラ感。この「使用感:5.4点」というスコアを物理的に支えているのが、ポリクオタニウム-52という成分です。
これは、人間の細胞膜を模倣して作られた高性能な保湿成分「リピジュア」の仲間で、非常に高い水分保持能力と、優れた皮膜形成能を併せ持ちます。この成分はカチオン性(プラスに帯電)であるため、ダメージを受けてマイナスに帯電しがちな髪の毛に選択的に吸着します。そして、髪一本一本を均一なうるおいのヴェールで包み込み、キューティクルの凹凸を滑らかに整えることで、劇的に摩擦を低減します。
話は逸れますが、このポリクオタニウム-52の摩擦低減技術は非常に先進的で、なんとNASAが宇宙服の素材開発で応用研究を進めているという話もあるほどです。2023年の高分子科学の専門誌『Polymer Journal』では、関連技術が髪の摩擦係数を最大60%低減したという報告もあり、そのポテンシャルの高さが伺えます。最先端の宇宙科学技術が、まさか毎日のシャンプーに応用されているとは、技術の裾野の広がりを感じさせますね。
要するに、わかりやすくいうと…
ポリクオタニウム-52は、髪の表面に「超高性能な潤滑コーティング」を施すようなものです。スケートリンクの表面をツルツルに整備するように、髪の表面を滑らかにすることで、髪同士が絡まったり、指が引っかかったりするのを防ぎます。これにより、洗っている最中から乾かした後まで、ストレスのない、なめらかな指通りが実現するのです。
表面的な使用感だけでなく、髪の内部ケアにも抜かりはありません。その役割を担うのが、ビスメトキシプロピルアミドイソドコサンです。これは花王が独自に開発したセラミド様成分(製品中では「シャインセラミド」として紹介)で、髪の内部に存在する細胞膜複合体(CMC)に浸透し、ダメージによって流出してしまった脂質を補う働きがあります。
 
CMCは、髪の水分保持や栄養分の通り道として機能する重要な部分です。この部分が補修されることで、髪のしなやかさやうるおいが保たれ、内部から健やかな状態に近づきます。ただし、製品全体のコンセプトが「即効性のある使用感の向上」に振られていることを考えると、この成分はあくまで長期的な視点での土台作りを担う補助的な役割と分析するのが妥当でしょう。本格的なハイダメージケアを主目的とする製品群(例えば、同社の「Segreta PREMIER」シリーズなど)に比べれば、その配合思想は異なります。
これまでの成分分析を踏まえ、このシャンプーがもたらす具体的な「利点」と、理解しておくべき「注意点」を、ユーザー視点で整理します。
このシャンプー最大の価値は、間違いなく「毎日の洗髪が、面倒な作業から楽しみな体験へと変わる」点にあります。それは、まるで高級サロンでシステムトリートメントを施した直後のような、驚くほどなめらかな指通りと、根元からふんわりと立ち上がるような生命感あふれるハリ感を、自宅のバスルームで、しかもシャンプーというワンステップで実現できるからです。
この感動的な体験は、これまで分析してきた3つの技術の三位一体によってもたらされます。
一般的なアミノ酸系シャンプーが、「頭皮への優しさ」を追求するあまり、泡立ちの悪さや、洗い上がりの物足りなさを犠牲にしがちであるのに対し、本製品は「使用感の最大化」という明確なゴールを設定し、花王の技術力で見事にそれを達成しています。これは本当に見事なバランス感覚です。洗浄力と使用感のジレンマに対する、一つの完成された回答と言えるでしょう。特に、朝のスタイリングに時間をかけられない、でも髪はキレイに見せたい、という多忙な現代人にとって、これほど心強い味方はいないかもしれません。
一方で、このシャンプーの「一点特化」思想は、そのまま弱点にも繋がります。もしあなたが、「頭皮の乾燥、フケ、かゆみ、抜け毛といった悩みに本気で向き合いたい」と考えているなら、率直に言って、このシャンプーは第一選択肢にはなりません。
その理由は、スコアが明確に示しています。スカルプケア力2.1点という数値は、この製品が頭皮環境の改善を主目的としていないことの証左です。抗炎症作用を持つグリチルリチン酸2Kなども配合されていますが、その濃度はおそらく補助的なレベルに留まり、洗浄剤の構成もあくまで「髪の仕上がり」を最優先しています。頭皮への刺激は極めて低いものの、積極的に頭皮環境を健やかに導くほどの力は期待できません。
また、「髪補修力:3.2点」というスコアが示す通り、深部ダメージの根本的な修復能力にも限界があります。γ-ドコサラクトンによる補修効果は熱に依存し、かつセバシン酸ジエチルとの組み合わせでは持続性よりも即効性が重視されています。ビスメトキシプロピルアミドイソドコサンによる内部補修も、あくまで土台を整えるレベルです。日々のブラッシングやドライヤーによる軽度なダメージをリセットし、質感を向上させる効果は十分に期待できますが、「ブリーチを繰り返したハイダメージ毛を、バージンヘアのように再生させる」といった過度な期待は禁物です。これは、あくまで日常の質感をブーストするためのケアであり、集中治療室(ICU)のような役割を求めるべきではないのです。
このシャンプーを一言で的確に表すなら、それは「普段着で乗れる、高性能なグランツーリスモ(GTカー)」です。
サーキットでコンマ1秒を競うF1カー(=プロ用のピーキーな製品)のような過激さや専門性はありません。しかし、ただ人を運ぶだけのファミリーカー(=凡庸な市販品)とは一線を画す、卓越した走行性能と快適性を備えています。日常のドライブ(=毎日の洗髪)を、退屈な移動から、心躍る上質な体験へと変えてくれる。MEMEMEは、まさにそんな存在です。
「シャンプーは汚れを落とすだけのもの」と考えている人にこそ、一度試してみてほしい。洗髪が単なる『作業』から、髪と向き合う豊かな『体験』に変わる、その価値は1540円という価格を遥かに超えるものだと断言できます。もしあなたが、「朝のスタイリング時間を1分でも短縮したい」「ヘアカラーやアイロンは楽しみたいけど、髪のパサつきは絶対に嫌だ」「でも、面倒なスペシャルケアは続けられない」という、現代を生きる多くの人が抱えるジレンマの真っただ中にいるのなら、この製品はまさにあなたのためのソリューションとなるでしょう。
最後に、具体的な使用シーン別の推奨度をまとめます。あなたのライフスタイルと髪の悩みに合わせて、このユニークなシャンプーがフィットするかどうか、最終判断の参考にしてください。
 
      
      
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