総合点

総合ランク
成分数
植物エキスの数
コスパ
安全性
素材の品質
洗浄剤の品質
洗浄力
使用感の良さ
エイジングケア
ホワイトニング効果
保湿効果
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メーカー
株式会社ヘアジニアス・ラボラトリーズブランド
VITALISM(バイタリズム)容量
150ml参考価格
1640円1ml単価
10.9円JAN
4580431517057ASIN
B0B6G266QB発売日
20220406ID
8856全成分
解析チームです。スカルプケア、つまり髪と頭皮環境の健全化を追求するブランドとして名を馳せたVITALISM。その開発チームが「専門家の知見をいかし」プロデュースしたという触れ込みで登場したのが、このフェイスウォッシュです。しかし、ここで一つの素朴な疑問が浮かび上がります。「なぜ、髪の専門家が洗顔料を?」彼らが持つ頭皮への知見は、果たして顔の皮膚にも同じように通用するのでしょうか。
メーカーは「低刺激性のアミノ酸系洗浄成分配合」と謳い、デリケートな肌への優しさをアピールしています。しかし、我々の解析データが指し示したのは、それとは全く異なる姿でした。洗浄力スコアは5点満点中4.9点という驚異的な数値を記録。これは、成分構成が「石けん」を主体とした、極めて強力な洗浄設計であることを物語っています。専門家の知見を活かしたというこの洗顔料、その真実の姿は一体どのようなものなのか?今回はその核心に迫ります。
要するに、この洗顔料は「洗浄力」という一点に性能を全振りした、極めてピーキーな製品です。その特性は、解析データにはっきりと表れています。まず衝撃的なのは、総合ランクが324製品中317位、総合評価が5点満点中わずか1.85点という結果です。この数値だけを見れば、市場にある数多の製品の中で、お世辞にも優れた製品とは言えない位置づけになります。
しかし、ここでチャートを見てください。一つの項目が異常なまでに突出しているのが分かります。「洗浄力」のスコアが、5点満点中4.9点という、ほぼ満点に近い数値を叩き出しているのです。これは、一般的な洗顔料の平均値を遥かに凌駕するレベルであり、文字通り「根こそぎ洗い流す」ほどのパワーを秘めていることを示唆します。では、なぜこれほど洗浄力が高いのに、総合評価はこれほどまでに低いのでしょうか?
その最大の理由は、チャートの対極にある「洗浄剤の品質」にあります。このスコアは、5点満点中わずか1.1点。これは、洗浄力の高さを実現するために、肌への負担が大きい成分を選択していることの裏返しです。処方全体が、肌本来が持つべき潤いやバリア機能を維持することよりも、とにかく皮脂や汚れを徹底的に除去することを最優先している設計思想なのです。
ここで興味深いのが、解析スコアの低さとは裏腹に、口コミサイトでの評価が5点満点中4.0点と、決して低くないという事実です。このギャップはなぜ生まれるのでしょうか。これは、「さっぱりとした洗い上がり=よく洗えた、良い洗顔だ」という体感に起因すると考えられます。特に皮脂分泌の多い方にとっては、この強力な洗浄力によるリセット感が、高い満足度に直結しているのでしょう。しかし、調査データに基づけば、その「さっぱり感」は、肌の保護膜である皮脂膜まで洗い流してしまった結果生じる「つっぱり感」の初期症状である可能性も否定できません。この製品を評価する上で、この体感と実態の乖離を理解することが、極めて重要になります。
この洗顔料の処方箋を読み解くと、まるで一つの物語が見えてきます。それは、肌を美しく健やかに保とうとする「光」の美容成分たちと、すべてを洗い流し去ろうとする「闇」の洗浄成分たちとの、壮絶な戦いの物語です。この内部でのせめぎ合いこそが、本製品のピーキーな性格を決定づけています。
メーカーが「アミノ酸系洗浄成分」とアピールする根拠は、おそらく「ココイルグリシンK」の配合でしょう。確かにこれはアミノ酸由来の洗浄成分です。しかし、一般的に知られている情報では、ココイルグリシンKはアミノ酸系の中でもトップクラスの洗浄力と、それに伴う肌刺激性を持つことで知られています。マイルドなアミノ酸系洗浄剤をイメージして使うと、そのギャップに驚くかもしれません。
さらに問題なのは、これが単体で使われているわけではない点です。成分表の上位には「ステアリン酸」「ミリスチン酸」「水酸化K」「ラウリン酸」といった名前が並びます。これは、脂肪酸(ステアリン酸など)とアルカリ(水酸化K)を反応させて作る、典型的な「石けん」の処方そのものです。加えて「ヤシ脂肪酸K」という、ラウリン酸を主成分とするヤシ油由来の石けんも配合されています。つまり、この洗顔料の正体は、アミノ酸系の皮を被った、強力な『ダブル石けんベース』なのです。
石けんベースの洗浄剤がなぜ問題視されるのか。理由は二つあります。
この強力なアルカリ性洗浄基剤こそが、洗浄力4.9という驚異的なスコアの源泉であり、同時に、肌への優しさを犠牲にしている最大の要因なのです。
一方で、この処方には希望の光とも言える、非常に優れた美容成分も配合されています。その筆頭が「テトラヘキシルデカン酸アスコルビル」、通称「脂溶性ビタミンC誘導体」です。
一般的な水溶性のビタミンC誘導体と異なり、脂溶性であるこの成分は、皮脂となじみやすく、肌の奥深く(角質層)まで浸透する能力に優れています。そのポテンシャルは計り知れません。
実際に、その優れた皮膚浸透性については、複数の研究で示されています。例えば、昭和大学の研究グループが2012年に発表した論文では、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルが皮膚への高い吸収性を持つことが示唆されており(日本ビタミン学会誌)、美容業界で非常に注目されている成分です。本来であれば、数万円する高級美容液の主役を張れるほどのスター成分なのです。
しかし、ここがこの製品の最大の悲劇です。これほど優れたエース成分も、活躍する舞台が整っていなければその真価を発揮できません。前述の通り、この洗顔料のベースは強アルカリ性。多くのビタミンC誘導体は、アルカリ性の環境下では不安定になりやすい性質があります。さらに、洗い流す製品である洗顔料に配合されているため、肌に留まって効果を発揮する時間は極めて短い。そして、とどめは「石けんカス」です。この残留物が肌表面を覆ってしまうことで、せっかくの有効成分の浸透を妨げてしまう可能性すらあります。これはまさに、最高級の食材を、焦げ付いたフライパンと質の悪い油で調理するようなもの。成分のポテンシャルが、処方全体の設計によって打ち消されてしまっている、非常にもったいない状況と言えるでしょう。
もう一つ、注目すべき「光」の成分があります。それが「α-グルカンオリゴサッカリド」です。これは、ショ糖と麦芽糖から作られるオリゴ糖で、近年スキンケア業界で「マイクロバイオーム(皮膚常在菌叢)」ケアの観点から非常に重要視されている成分です。
私たちの肌には、善玉菌、悪玉菌、日和見菌など、約1兆個もの常在菌が生息し、互いにバランスを取りながら「肌フローラ」を形成しています。このバランスが崩れると、肌荒れや乾燥、ニキビなどのトラブルにつながります。α-グルカンオリゴサッカリドは、肌にとって有益な善玉菌(美肌菌)のエサとなり、その増殖を選択的にサポートします。善玉菌が優位な環境になることで、肌は自ら潤い成分を産生し、病原菌の侵入を防ぐバリア機能が高まるのです。
この成分の配合は、肌の根本的な健康を維持しようという、非常に優れた意図の表れです。しかし、これもまた悲劇的な運命を辿ります。強アルカリ性の洗浄剤は、善玉菌も悪玉菌も関係なく、肌フローラ全体に大きなダメージを与えます。α-グルカンオリゴサッカリドは、いわば強力な洗浄剤という「巨大な嵐」がすべてをなぎ倒した後で、必死にバリアを立て直そうと奮闘している健気なサポーターのような存在です。その努力は尊いものの、毎日繰り返される嵐の前では、その効果が追いつかない可能性が高いと言わざるを得ません。
このように、VITALISMフェイスウォッシュの処方は、強力な洗浄力を持つ「石けんベース」と、それを補うかのように配合された「高機能美容成分」という、相反する要素が同居する、極めてアンバランスな構成となっているのです。
これまでの分析を踏まえると、この洗顔料がどのようなユーザーに「メリット」をもたらし、どのようなユーザーに「デメリット」をもたらすのかが、明確に見えてきます。これは万人向けの製品ではなく、特定の条件下でその真価を発揮する、極めて専門性の高いツールなのです。
この製品が光り輝くのは、ただ一つのシーン。それは「皮脂や汗、汚れでどうしようもなくなった肌を、強制的にリセットしたい時」です。この一点において、他の多くのマイルドな洗顔料の追随を許さない圧倒的なパフォーマンスを発揮します。
これらのシーンにおいて、本製品がもたらす「他の洗顔料では得られない、完全なリセット感」こそが、最大のメリットであり、口コミサイトで一定の高評価を得ている理由だと考えられます。それは、肌への優しさとのトレードオフによって得られる、一種の麻薬的な爽快感とも言えるかもしれません。
一方で、前述の特定シーン以外、特に乾燥肌や敏感肌、あるいは普通の肌質の人が日常的に使用した場合、この洗顔料は「破壊神」としての一面を覗かせます。そのリスクは主に3つに大別されます。
これが最大のリスクです。アルカリ性の強力な洗浄剤は、汚れや余分な皮脂だけでなく、肌を守るために必要不可欠な「皮脂膜」と「細胞間脂質(セラミドなど)」の一部まで根こそぎ奪い去ります。これにより肌のバリア機能は著しく低下。肌内部の水分が蒸発しやすくなる「過乾燥」状態を招くだけでなく、外部からのアレルゲンや刺激物が容易に侵入できる無防備な状態にしてしまいます。使い続けることで、乾燥するのにニキビができる、赤みやかゆみが出やすいといった、いわゆる「インナードライ肌」や「敏感肌」に陥る危険性が高まります。
洗顔後、肌がキュキュッと鳴るようなつっぱり感。これを「さっぱり」と好意的に捉える人もいますが、調査によると、これは洗浄成分(石けんカス)が肌に残留しているサインです。この金属石けんは、肌のタンパク質と結合して膜を形成し、ごわつきや乾燥感の原因となります。さらに悪いことに、この残留物が毛穴の出口を塞いでしまうことで、皮脂がスムーズに排出されなくなり、結果として新たな角栓やニキビの火種となりうるのです。つまり、「汚れを落とす」ための洗顔が、逆に「毛穴を詰まらせる」原因になりかねないという皮肉な結果を招く可能性があります。
テトラヘキシルデカン酸アスコルビル(ビタミンC誘導体)やパルミチン酸レチノール(ビタミンA誘導体)といった、本来は高価で高機能な成分が配合されている点は、一見すると魅力的に映ります。しかし、これらは肌に長時間留まってこそ、その真価を発揮する成分です。洗い流されるまでのわずか数十秒、しかも劣悪なアルカリ環境下では、その効果はほとんど期待できないと言ってよいでしょう。これは、製品の価格を不必要に引き上げているだけの「見せかけの成分(window dressing)」である可能性が否めません。同じ金額を投資するのであれば、洗浄に特化したシンプルな洗顔料と、これらの有効成分が高濃度で配合された美容液を別々に購入する方が、遥かに賢明な選択です。
ここで豆知識ですが、現代の優れた洗顔料の設計思想は、「いかに汚れを落とすか」から「いかに肌の潤いを守りながら、不要な汚れだけを選択的に落とすか」へとシフトしています。その主流は、肌と同じ弱酸性で、必要な潤いを奪いすぎないアミノ酸系やベタイン系の洗浄成分を組み合わせる処方です。その観点から見ると、本製品の「石けん主体・強アルカリ性」という設計は、やや時代と逆行している印象を受けます。もちろん、石けんには石けんの良さ(高い洗浄力、良好な泡立ち、生分解性の高さなど)がありますが、こと「顔を洗う」というデリケートな用途においては、より慎重な処方設計が求められるのが一般的です。
結論として、この洗顔料は、そのメリットを享受できるユーザーが極めて限定される一方で、多くのユーザーにとってはデメリットの方が遥かに上回る可能性が高い、非常にリスキーな製品であると評価せざるを得ません。
さて、長々と分析してきましたが、このバイタリズム フェイスウォッシュを一言で表現するならば、それは「脂性肌専用・最終兵器」です。
はっきり言います。ほとんどの人にとって、この洗顔料は日常的な選択肢にはなりません。肌のバリア機能を損なうリスクが高すぎるからです。しかし、何をしても抑えられない強烈な皮脂分泌に悩み、「どんな洗顔料を使ってもヌルつきが残る」「とにかく一度、肌をまっさらな状態に戻したい」と願う、『選ばれし脂性肌』にとっては、唯一無二の救世主になり得るポテンシャルを秘めています。その圧倒的な洗浄力は、他のマイルドな製品では決して得られない、劇的なリセット感を提供してくれるでしょう。
メーカーが謳う「低刺激性のアミノ酸系洗浄成分配合」という言葉。成分構成を客観的に見る限り、その言葉を鵜呑みにするのは難しいでしょう。これは「優しい兵器」などではなく、明確な目的を持った「強力な兵器」です。重要なのは、その特性を正しく理解し、自分の肌タイプと照らし合わせて、適切なタイミングで使うことです。
もしあなたが、どんな洗顔料でも太刀打ちできなかったほどの「最強の敵(皮脂)」と日夜戦っているのなら、この『最終兵器』を一度試してみる価値はあるかもしれません。それ以外の方は、あなたの肌バリアが悲鳴を上げる前に、そっと棚に戻すのが賢明です。自分の肌という戦場を見極め、正しく武器を選びましょう。
シャンプー解析ドットコム・カイセキストアなどを運営。